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ただ読みダイアリー(77)

佐藤亜紀 「戦争の法」読了。


戦争の法

この「ただ読み」シリーズも、このところ更新が途絶えていました。理由はふたつ。ひとつは、食べ物系の記事の作成に追われ、本についてなかなかじっくり考えて書く余裕がなかったこと、もうひとつは一時の仕事の渋滞から、疲れて電車の中で本が読めなくなってしまったこと。そんな中で読んだ本で、紹介できずに終わったものも何冊かあるのですが、これは絶対書き残しておかねばと思ったのが、この一冊。

「ミノタウロス」に続く私としては二冊目の佐藤亜紀です。「ミノタウロス」は、何の予備知識もなく図書館で手にして表紙と題名に惹かれて読み、その凄さにあとになってぶっ飛んだのでした。今回はそれなりに身構えて読みましたが、やはりいきなりぶっ飛んでしまいました。

とにかくこの人の文章力は凄い。実に押さえた調子の文体で淡々と書いているようですが、その言葉に込められたエネルギーの精緻な構造には舌を巻いてしまいます。ずっとこのさめた炎にあぶられていたいという思いを抱きながら読み進めました。

ソ連軍の侵攻により日本から分離独立したN***県で、ロシア人相手に娼館を営み始める母。死の商人として突如商才を発揮し始める父。主人公はそんな両親のもとを離れ、ゲリラの一員として戦争に身を投じます。そこで出会った「伍長」は戦争の天才・・・。

ネタばれしてはいけませんので、これ以上はやめておきますが、これだけ見ると実に政治的な小説のようですが、そこに描かれているのは、混沌とした状況を「散文的」に生きる人々の姿です。それぞれが置かれた状況から、どう明日の自分を描くのか、どうすれば明日に向かって自分を保存することができるのか、さらにはその状況からあざとく利益を引っぱり出すにはどう動くべきかを考えている人の姿です。政治状況や戦況は、あくまでもその借景に過ぎません。戦争という大状況の中にあっても、ミクロな視点から見えてくるのは、人がそれぞれの「法」に従って生きようとする姿の集合でしかないのだということです。そんな「散文的」な人の生き様を、混沌の中に精密に描き出したのが、この「戦争の法」という作品だといってよいでしょう。

それにしても、人に対してこれだけ冷徹なまなざしを持ち、それを文章にして淡々と描き上げる佐藤亜紀とは、いったいどんな人なのでしょう。恐るべし・・・です。そんな感をますます強くする一作でした。

この人の作品は全作完読する価値ありとの予感を抱きました。しばらく間をおいて次にかかりたいと思います。

さて次は何にするかな・・・。

| ただ読みダイアリー | 17:00 | comments(0) | trackbacks(0) | TOP↑

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