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ただ読みダイアリー(60)

浅田次郎 「プリズンホテル冬」、読了。


プリズンホテル冬


今回も「読まされました」。もうしばらく間をあけて、氏の他の作品なども読んでからまたこのシリーズをと思っていたのですが、図書館の書架に見つけるや、そんなことも忘れてすっと手に取ってしまいました。その時点からすでに「読まされて」います。

そして、ページを開くや否や、自分が自動判読機になったかのように、すいすい「読まされて」しまいました。表現が巧みで文章の流れがよく、読んでいて心地よいことはもちろんですが、ところどころに仕掛けられたアミューズメントが効果的に物語の世界から離れがたくしてくれ、時間の経過を忘れさせてくれるのです。

ディズニーランドのような(行ったことはありませんが・・・)よくできたテーマパークで遊んでいると、あっという間に一日が終わってしまうというような感じでしょうか。

それにしてもここに登場する人物みな、極度にデフォルメされ、カリカチュアされているにもかかわらず、現実感を失わず、心にずしずし入ってくるのはなぜでしょう。

今回はそうした登場人物相互の個々のドラマの同時進行で物語が進みます。

「登山家」と「いじめられっ子」、「まりあ」と「医師」、「お清」と「先生」。そのドラマの中に、対立する価値の二律背反を見ながら、自分の思いをそこに投影しながら、なんだかしんみり読み終わるのです。

「秋」の絢爛豪華なドタバタも面白かったのですが、今回は登場人物おのおのの心に焦点を当てて、それを赤裸々に描いたものだけに、よりいっそうひきつけられるものがありました。

冬は人が閉じこもって自分と向き合う季節。雪に閉ざされたプリズンホテルはまさにそんな舞台なのでした。

当然、激しくお薦め、です。

| ただ読みダイアリー | 23:25 | comments(0) | trackbacks(0) | TOP↑

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